さいとう実咲
元 名古屋市会議員(中区選出)
平成24年(2012年)11月29日 個人質問
◆(さいとう) それでは、通告に従いまして、随時質問をさせていただきます。
介護給付適正化についてお尋ねいたします。
近年の高齢化の進展により、65歳以上の高齢者人口は全国で過去最高の2975万人、高齢化率は23.3%に達しています。本市においても、同日現在の高齢化率は21.4%となっております。今後も、いわゆる団塊世代が65歳以上になることなどにより高齢化が一層進展することが予想されています。
平成12年度には、介護の問題を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険制度が創設されました。以来、既に10年以上が経過し、ことしで13年目を迎えました今日、介護が必要な方やその家族の生活を支える制度として広く定着してきていると思われます。
本年3月には、早くも第5期目となる介護保険事業計画が策定されました。この計画では、要介護認定者数を平成26年度において8万7900人と見込んでおり、制度発足時の平成12年度末現在の3万7251人と比較し、約2.4倍の伸びとなっています。また、要介護認定者が介護サービスを利用した費用である介護給付費についても、平成26年度において1529億円と見込んでおり、平成12年度の約468億円と比較し、約3.3倍となっています。
このように、高齢化の急速な進展と介護保険制度の定着により、利用者数も介護サービスの量も大幅な伸びを示しています。その結果、第5期の介護保険料も、第4期の月額基準額4,149円から第5期は5,440円と大幅な引き上げとなっており、市民の負担感は大きくなっています。市民の負担している保険料は、有効かつ適正に使われるようにしていただきたいと強く思います。
今後もふえ続ける需要に対して、中長期的な需要予測の計画とその対策は本市の責任であると思いますが、介護保険制度を持続的、安定的なものとするため、今後どのような方針で臨んでいかれるのでしょうか。また、保険者として介護給付費や保険料抑制のために、例えば、他自治体では民間の活力を用いる事例もありますが、保険者として介護給付費の請求内容をチェックするなど、新たに取り組めることがあるのではないでしょうか。以上を健康福祉局長にお尋ねをいたします。
続きまして、堀川のにぎわいづくりと新堀川の浄化についてお尋ねをいたします。
堀川は、名古屋城築城にあわせて約400年前に開削され、以降、名古屋のまちの成長と発展を支えてきた本市の母なる川であるとともに、都心を流れる貴重な水辺空間でもあります。一時期は深刻な水質の悪化が進みましたが、木曽川からの導水社会実験や、河川護岸の整備にあわせたヘドロの除去、合流式下水道の改善などが進み、水質も回復してまいりました。それに伴い、癒やしの空間でもある水辺の有効活用が求められてきました。
近年では、全国的に川を生かしたまちづくりが盛んで、隅田川や道頓堀川を初め、先進的な取り組みがなされており、堀川の納屋橋周辺においても広場や遊歩道が整備され、オープンカフェで人々がくつろぐ姿やイベントでにぎわう光景も見られるようになりました。また、堀川1000人調査隊を初め、多くの方々が水質浄化、歴史、にぎわいづくりなど、さまざまなテーマで活発に活動をされています。
先日、納屋橋にある堀川ギャラリーにて鯱城・堀川と生活を考える会により水質調査の展示が行われておりました。9年間の調査結果などがまとめられ、堀川の水質について考えるすばらしい取り組みであると感じました。
しかし、こういったすぐれた取り組みにもかかわらず、水辺空間のにぎわいはまだまだという感じが否めません。
堀川には、こういった活動のほか、歴史を感じる景観、自然、整備された施設など数多くの資産があり、これらを生かすことで、さらににぎやかで楽しい堀川につながるのではないでしょうか。
この10月、本市は堀川のまちづくり構想を策定されましたが、今後どのようにして堀川ににぎわいを創出していくのかを緑政土木局長にお尋ねをいたします。
次に、新堀川の浄化についてお尋ねをいたします。
新堀川は、明治43年、流域の洪水対策や物流水路として船舶航行を目的に、精進川を拡幅し整備されました。当時は多くの船が往来し、活況を呈していたと伝えられています。
しかし、新堀川は流入河川などの水源がなく、さらに堀川との合流部から最深部である汐留、現在の矢場町あたりまではほぼ水平となるように設計、掘削をされております。このため、新堀川全域が名古屋港の潮の影響を受け、ヘドロなどが堆積しやすい構造となっていることから悪臭が発生する原因となっており、苦情も絶えません。
さて、新堀川は自然の水源を持たない河川ですが、過去、庄内川から導水事業を行っていた時期がありました。今から80年前の昭和7年、当時下水道課長を務め、後に名古屋市長に就任した杉戸清氏は、新堀川浄化を目的として庄内川から取水し、御用水を経由して船付ポンプ所で揚水、堀留処理場まで圧送した上で新堀川に放流するという壮大な庄内川導水計画を立案、実施をしています。
杉戸氏は、既存の用水を活用するなど、コスト低減に知恵を絞る一方、新たに圧送管やポンプ所を設置するなど、思い切った投資を行っております。なお、杉戸氏は、新堀川などの河川の浄化に取り組んだとして、本年の11月13日、名古屋市下水道供用開始100周年記念式典において顕彰を受けています。
私は、現代版の新堀川の浄化事業について、その可能性を検証してみました。
導水についてになりますけれども、まず、新堀川の最上流部である堀留から今池まで、上下水道局による堀留幹線が3.4キロ敷設されていることが判明いたしました。この幹線を導水事業に利用することは可能です。次に、今池から鍋屋上野浄水場までは残り3キロ。この部分のみ専用管でつなぐことができれば、80年前の導水事業を再現することは可能であります。
3キロの圧送管並びにポンプ設置費用などの費用対効果の検証、そして、水利権のクリアは大きな問題ではありますが、私も国土交通省水管理・国土保全局長のもとに走り、さまざまなお話を賜りました。やはり先人がなし遂げた新堀川浄化事業について、ぜひ将来的な課題として研究に取り組んでいただきたいと思います。
河村市長もおっしゃられていましたよね、技術者は実績が目に見えてすばらしいと。本当にそのとおりであり、我々に多大なヒントをお与えくださいます。
さて、本市の新堀川における具体的浄化策についてですが、ヘドロの除去につきましては、護岸整備にあわせて平成21年までに全川にわたり実施されたと伺っております。そして、もう一つの対策ですが、新堀川へ放流される汚濁負荷をできる限り低減させることが重要だと考えています。
新堀川流域は、ほぼ全域が合流式下水道で整備されており、雨量が増加すると路面などのまちの汚れや汚水の一部を含んだ雨水が下水道を通じ直接河川に放流されます。このため、合流式下水道の改善対策にしっかり取り組むことが重要であります。
私は、先人に負けない知恵やアイデアを出し、堀川同様、多様な施策を組み合わせ、合流式下水道の改善を進めていくことが重要であると思っています。
そこで、上下水道局長にお尋ねをいたします。都心を流れる新堀川の浄化対策として行われている合流式下水道の改善について、その考えと取り組みについてどのようにお考えか。また、杉戸氏が取り組まれた事業計画から得たものは何かをお答えいただきたいと思います。
以上で、私の第1回目の質問を終わります。
<<当局回答>>
◎健康福祉局長(長谷川弘之君) 介護給付適正化について、2点のお尋ねをいただきました。
まず、1点目の介護保険制度の今後の方針についてでございます。
介護保険制度は、必要な介護の給付に要する費用、介護給付費を公費50%、保険料50%で賄うことを基本としております。平成24年度からの第5期介護保険事業計画策定に当たりましては、高齢化の急速な進展による要介護者数増に伴う介護給付費の増加への対応に加え、特別養護老人ホームなど、さまざまな介護サービスの充実に必要な費用を盛り込んだところでございます。
その結果、国、県、市の公費負担分に加え、第1号被保険者の介護保険料につきましても引き上げとなったところでございます。
今般の第5期計画策定に向け、介護保険制度を持続的、安定的な制度にするため、所要の措置を講ずるよう私どもも国への要望を行いました。また、国におきましても、対象者の範囲や給付と負担のあり方など、さまざまな観点から法改正の検討がなされたところでございますが、結果として抜本的な改正が見送られたところでございます。
今後も介護給付費の増加傾向は続いていくものと見込まれます。きちんと丁寧な議論をして、介護保険制度を安定的に運営していくための所要の措置を講ずることが必要であると認識しております。
引き続き、国の負担割合の増を含めた制度の見直しなどを行うよう、大都市民生主管局長会議等の要望活動を通じ、国に対して要望を行ってまいりたいと考えているところでございますので、御理解賜りたいと存じます。
次に、介護給付適正化事業についてでございます。
議員御指摘のとおり、本市では、介護保険サービス利用者に対する適切なサービスを確保し、介護給付費の過度の増大を防止できるよう介護給付適正化事業に取り組んでいるところでございます。
具体的には、愛知県国民健康保険団体連合会と連携を図りながら、介護サービス事業者に対しましては、報酬請求に関して疑義のある請求について再確認を行ったり、居宅介護支援事業所への実地指導の際にケアプランの点検などを実施しております。
また、在宅の介護サービス利用者に対しましても、サービスの利用回数や費用のお知らせを送付するなど、さまざまな観点から適正化のための事業に取り組んでいるところでございます。
今後の方針でございますが、本年4月から介護保険事業者の指定、指導等に関する権限が愛知県から本市へ移譲されたところでございますが、保険者の責務として、介護給付の適正化や事業者指導に積極的に取り組むことが大変重要であると考えているところでございます。
介護保険制度の長期的、安定的な運営のためにも、また、被保険者の皆様から信頼される制度とするためにも、引き続き介護給付適正化事業について取り組んでまいりたいと考えておりますので、御理解賜りたいと存じます。
以上でございます。
◎緑政土木局長(山本秀隆君) 堀川のにぎわいづくりについてお尋ねをいただきました。
堀川まちづくり構想は、平成22年度より、市民団体、経済団体、学識経験者、行政の委員から成る堀川まちづくり協議会において策定を進めてまいりましたが、この10月に「うるおいと活気の都市軸・堀川を再び」をテーマとして公表したところでございます。
本構想は、堀川の自然、歴史、市民活動といった多くの資産を民産学官の協働によってつなげ、誰もが主役となって堀川ににぎわいを創出することを目指したものでございます。これまでも河川整備や水質浄化などのハードを中心とした計画はございましたが、今回、堀川を軸とした周辺のまちづくりも含めたソフト中心の構想を市民の皆様とともにまとめたことは大変意義深いと考えております。
本構想の推進に向けて、早速今月より堀川で活発に活動している団体の代表が一堂に会する場を設けまして、堀川の魅力を向上させる取り組みについて議論を始めたところでございます。
今後、このような機会を重ね、さらに議論を深めながら、民産学官が一体となった堀川のにぎわいづくりを進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
◎上下水道局長(長谷川和司君) 新堀川の浄化に関しまして、上下水道局に2点のお尋ねをいただきました。
初めに、新堀川の浄化に向けた合流式下水道の改善についてでございます。
本市の下水道は、生活環境の改善と浸水の防除を同時に解決でき、また、急速な都市化に伴う汚水量の増加にも柔軟に対応できる合流式という方式で創設時の事業に着手いたしまして、現在、市域の約6割が合流式下水道で整備されております。
この合流式下水道におきましては、降雨量の多い場合には、路面などのまちの汚れや汚水の一部を含んだ雨水が直接河川へ放流されますことから、本市では、汚れの度合いが大きい降雨初期の雨水を一時的に貯留する雨水滞水池の建設や、下水管内のごみが川などに流れ出ることを防止するごみ除去装置の設置など、合流式下水道の改善を進めているところでございます。
御質問の新堀川流域につきましても、合流式下水道で整備されておりますことから、その改善策として、昭和62年に本市で最初の雨水滞水池である高辻雨水滞水池を稼働させるなど、施設の整備を着実に進めております。
また、平成23年度には、雨天時の放流水質の向上を目的といたしまして、新技術でございます簡易処理高度化施設を伝馬町水処理センターに導入いたしました。
合流式下水道の改善に当たりましては、施設の整備に多大な事業費と期間を要しますが、新技術に関する調査研究にも積極的に取り組みまして、今後も効率的かつ効果的に合流式下水道の改善事業を推進してまいりたいと考えております。
次に、2点目といたしまして、杉戸清氏の庄内川導水計画から何を学んだかという点についてでございます。
杉戸氏は、当時、汚濁が進んでいた河川を浄化するために、下水道の整備、工場廃水の取り締まり、河川の水量を増加させるための清水の注入の三つが重要と考えまして、その一つの施策として庄内川から新堀川への導水を実行いたしました。
その後、新堀川への導水につきましては、庄内川の水質が悪化したこと、導水路として利用しておりました御用水が農業用水路としての役割を終えていたことなどにより廃止され、現在に至っておりますが、下水道の整備とともに新堀川の水質は大幅に改善されておるところでございます。
私どもも、杉戸氏ら先人たちの河川浄化に対する努力に敬意を表するとともに、長期的な視点を持ちながら、その時点の最善の手法を進取の気性を持って選択していくという先人たちの姿勢を教訓といたしまして、新堀川のさらなる浄化を目指し、効果の高い合流式下水道の改善事業を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
<<再質問>>
◆(さいとう) それぞれの御答弁ありがとうございます。
長谷川健康福祉局長、愛知県国民健康保険団体連合会と連携を図りながらと御答弁をいただきましたけれども、他都市においては、民間システムを活用し、国民健康保険団体連合会の給付データに個々の要介護認定データを突合することにより、心身状態に合わせた給付チェックを行っているところもあるとお聞きしております。
給付適正化においては、不要なサービスをなくして給付抑制を図るばかりでなく、介護サービス利用者にとっても必要なサービスを十分に受けていただくことを点検する、そういった意味でも継続的かつ積極的に取り組むべきではないかと考えます。
今後、本市においてもさらなる適正化に向けた予算措置の検討や民間コンサルティングなどによる勉強会への積極的な参加など、より一層の効率化が図られることを要望いたします。
山本緑政土木局長、堀川の水質浄化はもとより、にぎわいづくり、今後も民産学官がしっかり連携をし、団結して、さらなるにぎわいと活気を生み出せるように、また、イベント等々もせっかく開催しておりますので、もっと広報面で周知をお図りくださるよう要望いたします。
さて、こちらは再質問になりますが、私が新堀川に着目した背景には、堀川、新堀川と似たような名前でありながら、本市において治水以外の政策が過去余り行われてこなかったことがあります。
堀川が母なる川とたたえられておるのですから、対にある新堀川も来年創祀1900年記念大祭を迎える熱田神宮を囲む重要な河川でありますし、活性汚泥法を日本で初めて導入した近代下水道の先駆けでもある堀留下水処理場旧施設も82年前の姿をそのまま残しています。本市の歴史産業遺産に十分なり得る施設であります。
さらに、新堀川には、記念橋のような趣のある橋など魅力的な施設が幾つか残されております。美しい水辺空間には、人々に潤いをもたらすだけではなく、ヒートアイランド対策の上からも重要ですし、一方、にぎわいの創出の上からも重要な都市資産だと考えております。
今日まで新堀川の位置づけは、雨水排水と下水処理水の放流に特化し過ぎていて、河川浄化、観光、文化、にぎわい、環境などの視点が欠けていたのではないかと思います。
下水道100周年の本年、新堀川の今後の方向性について議論を始めるよい機会だと思います。市長の考えをお聞かせいただきたいと思います。
◎市長(河村たかし君) 確かに中川運河と、それから堀川はそれぞれ計画もできていまして、市民の皆さんの参加でいろんな知恵が浮かんでおりますので、新堀川も昔は大分氾濫したらしいわね、あそこ、精進川ということで。あそこの兵器工場をつくるのと、それから鶴舞公園、しゅんせつの土砂を鶴舞公園を埋めるのに使ったらしい。というより、それを埋めて鶴舞公園ができたらしいんだけど、そういう歴史もありますし、例えば、どえりゃけにゃあでっかい巨大な釣り堀とか、せっかく、今、水辺を何とか生かそうということが非常に各都市において大きなテーマになっておりますので、中区長になるかな、一番多いのは。中区、昭和区……。中区やね、やっぱり。中区長に一遍、これに着手するように、どういうふうにやっていったらええか、ワークショップというのか、そうやって指示します。
◆(さいとう) 御答弁ありがとうございます。
汚れているものをきれいにしてほしい、そう思うのは人の常でありまして、この特殊な新堀川という河川は素人でどうこうできるものではありません。よりすぐりの技術者の力量を発揮していただきまして、いっそ、釣り堀ができるような本当にきれいな……(「打ち合わせしていないよ」と呼ぶ者あり)ガチですから、済みませんね。これは違うんですよ。それで、自然浄化能力で美しい河川にできるとも思ったりもしますので、堀川と新堀川、本市中心を代表して流れる河川が美しくなりますように、緑政土木局、上下水道局の両局ともに一層の御努力を期待いたしまして、あとは中区長でございますか、指示をしていただいて、お願いします。
それでは、私の質問を終わります。
